鉄道模型に於いて、模型的とはどういうことか。私なりの意見を述べれば、
1・小型である 2・形状および機構が簡単である 3・模型ならではの工夫がある
この3つに集約されるのではないかと思う。
昨今の鉄道模型製品は、質・量ともに厚みが増したと思う。ゲージもスケールも多様になり、
それぞれに熱心な愛好者がいる。プロトタイプも「こんなものまで」と言わしめるような、
超マイナーなものにまで及び、細密度も驚くべき水準に達しているものがある。
そこで思うのだが、単純にスーパーディテールにのみ眩惑されて「実物そっくり」と
満足していていいのだろうか。もう少し「自分らしい」鉄道模型の楽しみ方はないものだろうか。
たとえ下手でもいいけれど、もちろん上手に作れればなにより本人が楽しいはずである。
スクラッチビルトでも、キット加工でも「ちょっとここに凝ってみました」と言えたらなおいい。
「これが私の模型です」と宣言できるのものがつくりたい。
そんな作者の個性がもっともよく表れるのは、上記のような「模型的な」模型なのではないかと
考えたりしているのである。
参考までに、凸型電機というものについて、その特徴と思われるものを挙げておこう。
蒸機やタンク貨車は別として、鉄道車輛の車体は概して箱型が多い。機関車でも、箱型なら大きな機器を収めやすいはずである。
なのに、なぜか運転台(キャブ)を中央に置き、その前後のボンネット内部に機器類を入れた機関車がある。その車体を真横から見ると、漢字の「凸」の字に似ている。それが凸型電機である。
キャブを中央に持ってきたのは、入換作業の便宜を図るためだろう。箱型機のように、車体の両端に運転台があると、進行方向を変えるたびに、運転士が移動しなくてはならないか、そうでなければ推進運転の際など、非常に見通しが悪いはずである。中央に運転台があれば、そんな煩雑なことはない。
比較的小さなボンネットの内部に機器類が収まるのは、凸電という機関車が、主に中小型の車輛だからだと思われる。中小私鉄が自社の貨物用に導入したものが主なので、小さくても用が足りるのであろう。で、台車が2軸ボギー2台(4軸)であれば「BB凸電」、2軸だけなら「B型凸電」、略して「B凸」となるのである。
↑実物のB型凸電に初めて会った日、銚子電気鉄道のデキ3型を撮影した。
まだデジカメなんて発展途上で、オリンパスOM-1にポジフィルムを詰めて
持っていったが、露出といえば中央重点測光のメーターの中心に合わせる
程度のことしかできず、ご覧のように台枠周りが黒潰れしてしまった。
いまとなっては苦い思い出である。 2005年9月撮影
中学生の時以来、友人の薫陶でNゲージに手を染めたものの、国鉄/JRの身近な車輛以外には余り興味がなかった。その頃から高校時代には1/43や1/87のモデルカーを集めるのが主であった。
高校時代の旅行も、2年の夏に前出の友人と上毛電鉄に、そして修学旅行で京都・奈良に行っただけだった。旅先で見て、乗った上電のもと東武3000系、嵐電モボ111型、三条駅近くにあった宿の前を通っていた京阪京津線などに影響されて、私鉄電車も面白いものだと思うようになった。
TMS(月刊鉄道模型趣味)を知ったのは、丁度その時期だった。
Nしか眼中になかった無知な少年に、幅広く、奥深い鉄道模型の世界を見せてくれたのが、いまに続くこの趣味の原動力になっていると思う。
初めて16番(1/80・16.5mm)の模型を買ったのは、3年の冬だったと思う。
件の友人(共に受験生だった)と一緒に模型店に出向いたのだから、入試が一段落したころだろうか。
記念すべき第一号は、<日本油脂武豊工場 雨宮製1・2号機(初代)> 実はB型凸電だったのである。(イラスト)
一応、日本油脂武豊工場専用鉄道というのは知っていた。TMS542号(1991年5月号)に、2代目(神鋼製)の2号機の写真が載っていたからである。
これを買った理由は、 1:形が珍妙であったから 2:価格が安かったから
たったこれだけである。
横から見るとボンネットがほとんど三角形なのだ。これでも凸型には違いない。自重わずか7.5tという超小型機で、模型発売当時の広告では「16番史上最小の機関車登場!」と銘打っていた。
実物のB型凸電を初めて見たのは、2005年だったか、銚子電気鉄道の仲ノ町車庫を訪れたときである。
この時は、黒一色で、ビューゲルを装備していた。
その後、銚電を再訪する機会に恵まれ、2012年のデキ3卒寿イヴェントのときには、ツートンカラーで、なんとトロリーポールに換装されていた。
その後、ポール装備のまま、黒一色に戻されて数年経過したが、2016年に博物館で展示された際にグレー一色になり、ポールまわりも原型に近いような状態に復元されたという。
(2016/10/5追記)
参考までに、ボギー台車を2基備えたBB凸電の写真を挙げておきます。
左は川崎製のもと東京急行電鉄デキ3021、現在は上毛電気鉄道で保存されています。
下の2枚は、廃止になった栗原電鉄ED20型。もともと762mmの台車を履いていたED18型でしたが、製造後5年で1067mmの台車に交換され改軌。
(2023/06/12追加)
上掲の東京急行デキ3021とほぼ同型と思しき
山形交通ED1
奥羽本線の糠ノ目(現在の高畠駅)から二井宿までを結んでいた、山形交通旧高畠駅に保存。
これもBB凸電ですね。
川崎製の凸型機は、この2両のほかには類例がないような気がします。